14 大人のヤセ我慢(つづき)

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14 大人のヤセ我慢(つづき)

しかし、これで歩くのは、いささか難しいのも目に見えている。 それだけに、真友子は、もう一度右手を差し出した。 「じゃあ、せめて大ちゃんのカバン持たせてくれない?」 すると、少し考えるように視線を俯かせた大祐が、譲歩するように 小さい紙袋を一つ差し出してくる。 それじゃ、今と変わらないじゃない。 そう思うが、帰宅時間の改札の真ん前で、イイ年のカップルがこれ以上押し 問答をするのも躊躇われ、真友子は大祐の右手に下がった大きい紙袋を小さく引っ張った。 「こっちがいいな」 ええぇ……。 渋る大祐に、「ほら、みんなが見てるよ」と小さく囁く。 それで、ようやく大祐も渋々真友子に従い、大きめの一つを渡してくれた。
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