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16 論より体験
お帰り。
大きなスーツケースと共に現れた大祐を、真友子は笑顔で迎えた。
しかし大祐のほうは、はにかみの裏側に淡く困惑を浮かべる。
「お邪魔、します……」
しかし真友子は、ぎこちなく玄関に立つ彼を前に、少し眉根を寄せた。
「お正月のお休みの時は、『ただいま』って言ってたじゃない」
「そうだけど……。
あの時は、なんていうかちょっとバカンス気分っていうかだったから、
浮かれてつい……」
「だったら、これからひと月、ここが大ちゃんの家にもなるんだから、
尚更『ただいま』じゃない?」
うん……。
頷いた大祐は、素直に「ただいま」と照れ笑いに淡く口元を歪めた。
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