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3、であう
五日目、土曜日で学校は休みだった。
後は待つだけと考えていたが結局じっとしていられずに、昼には二人でチラシを配りに公園へ向かっていた。何組かの家族連れに声をかけたが、断られてしまった。里親探しのサイトにはまだ希望者は表れていない。焦りで気分が悪くなりそうだった。
家に戻ろうとしょんぼりしながら歩いていると、掲示板に貼った里親募集のチラシの前で二人の男性が話をしていた。一人はジュリエットの前で見たあの人だ。もう一人の三十代ぐらいの男性に何かを言われて、首を横に振っている。
佳菜子が突然走り出し、二人の前に立った。
「子猫に興味あるんですか?」
佳菜子に声をかけられ二人とも驚いていた。私も佳菜子の行動力に驚いた。そんな私達をよそに佳菜子は子猫の話を続けた。
「いや…うちは無理なんだけど」
三十代ぐらいの男性は、チラリともう一人を見る。彼は困った顔でまた首を振った。「もう帰りますから」と立ち去ろうとする彼を私は呼び止めた。
「もし、気が変わったらお願いします」
私は彼にチラシを渡した。受け取ってくれないかもと思ったが、手に取ってくれた。彼はチラシの写真をじっと見ていた。
「あの」
消え入りそうな声で彼は言った。しかし直ぐに「何でもありません」と足早に行ってしまった。
「あいつ前に猫飼ってたから勧めてみたんだけど…ごめんな」
三十代の男性は小さなネットショップのオーナーで、行ってしまった彼はアルバイトの大学生だという。ただ、色々あって今は休学中らしい。
「でもやっぱり、あいつは猫がいた方がいいと思うんだよな」
オーナーがどこか寂しげにつぶやいた。それが少し引っかかった。
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