3、であう

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 六日目、ジュリエットの店長さんから連絡があっが、里親が見つかった訳ではなかった。  もし、明日も里親が見つからなかったら、店で預かれないかショッピングモールに交渉してみるという。店長さんには感謝しかなかった。  昼、佳菜子が何か作業をしているので、一人でコンビニへ昼食を買いに行った。買い物を済ませ帰り道を歩いていたら雨が降り出した。傘を持っていなかったのでシャッターの下りた店先で雨宿りした。スマホで確認すると、直ぐに止みそうだった。  「あ」  隣にあの大学生の彼がいた。私と同じコンビニの袋を持っている。とりあえず、「どうも」と挨拶をした。  「猫…里親見つかりましたか」  雨の音で消えそうな声だった。私は「まだ」と答えた。  「あ…の」  彼は何かを言いたそうだったが、言葉にならないようだった。少しの間があって、絞り出すように彼は言った。  「あの写真の…猫が抱えていたテディベア。どこで手に入れましたか」  テディベア?予想もしていなかった問いに私は驚いた。あのテディベアは去年の年初めに、近所で開かれたフリーマーケットで買ったものだ。  「そうですか」  彼はそのまま考え込んだ。沈黙の後、話してくれた。  「あのテディベアは、たぶん…母が作ったものだと思ったので」  私は驚いた。普段あまりぬいぐるみに興味のない私だが、あのテディベアは一目惚れして衝動買いした物だった。  「あのテディベア凄く子猫が気に入ってて、里親が見つかったら一緒に渡そうと思ってるんですが…私も気に入っていて、同じ物が欲しかったんです。まだ売ってたりしますか?」  私は少し興奮気味に彼に尋ねた。彼は困ったような顔をした。喋ろうか悩む素振りの後、言った。
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