3、であう

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 「もう…いないんです」  いない。その意味に気が付くのに少し時間がかかった。  「ごめんなさい」  私はとっさに謝った。  「あなたが謝る事ではないですから」  空が明るくなった。まだ降っている雨の粒を、帰ってきた日差しが照らしキラキラ輝いている。  「元々は飼っていた猫のおもちゃとして作り始めたんです。それが年々上達して販売するようになりました。その猫も、子猫の時に拾った猫で…懐かしかったんです」  ずっと陰っていた彼の表情が、少し和らいだ。  「子猫、やっぱり飼えませんか?」  また、少しの沈黙があった。  「怖いんです」  彼は、一つ一つ言葉を探すように続けた。  「ある日突然、家族がなくなったんです。だから…また失うのが怖くて、一人でいたいんです」  雨が上がり、彼は軽く頭を下げて去っていった。  一つ、思い出したことがある。ちょうど一年前に大きな火事があった。何棟もの民家が巻き込まれ、死傷者が何人も出た。遺族は形見すら手元に残らなかったらしい。
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