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するとそこには、30代くらいの美しい女性が立っていた。
彼女の手にも白い花が握られている。
女性は一礼すると、私に話しかけて来た。
「私、後藤華子の妹で、亜紀と言います。」
「ああ、妹さんですか?道理で似てらっしゃると思ったわ。私、近所に住んでいる宮里と言います。この度はこんなことになって。お悔み申し上げます。」
「いいえ、こちらこそ。姉がご迷惑をおかけしまして。」
「とんでもない。火事は仕方ないですよ。後藤さんちは離れていてどこにも燃え移ってないですし。」
「いえ、たぶんそれだけではなく、姉が生前さぞご迷惑をかけていたのではないでしょうか。本当にすみません。」
「とんでもない。後藤さんはいつも穏やかで温和な方でしたわ。ところで、拓海君は元気?」
「・・・拓海・・・ですか?」
亜紀さんはキョトンとした顔をしていた。
「あなたからしたら甥っ子になるのかしら?後藤さんの息子さん。」
亜紀さんは明らかに困惑していた。
「姉に子供はいません。」
「えっ?」
「死産だったんです。男の子だったんですけど。」
私はわけがわからなくなった。確かに拓海君は存在したのだ。
後藤さんも、男の子が生まれたと幸せそうに報告したではないか。
「で、でも・・・。時々、家の中から声が・・・。」
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