後藤さんちの拓海くん

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後藤さんちの拓海くん

久しぶりに後藤さんの姿を見た。 後藤さんは、いつも優しそうな微笑みをたたえたご近所でも評判の美人の奥様で、長く後藤さん夫婦には子供がおらず、ようやくご懐妊になり、つい最近まで大きなお腹を抱えて幸せそうにしていたのだが、ここ一か月くらい姿を見なかった。 「お久しぶりです、後藤さん。」 ふっくらしていたお腹は、見事に元のスレンダーな体に戻っていたのだ。 「もしかして、産まれたの?」 私は期待を込めてたずねると後藤さんは嬉しそうに頷いた。 「ええ、一か月前に。里帰りしてたんですよ。」 なるほど、それで姿を見なかったのだ。 「うわぁ、おめでとうございます。で?男の子?女の子?」 「男の子です。拓海と名付けました。」 「男の子!今度ぜひ見たいなあ、赤ちゃん。」 そう言うと後藤さんは少し寂しそうな顔をした。 「それが、未熟児だったので、まだ保育器の中なんです・・・。」 「そうだったの。まあでも、最近は医療が進んでるから。すぐに育ちますよ。うちの子も未熟児だったんだけどね、家に連れて帰ったとたんにミルクをたくさん飲んでプクプク太っちゃって。」     
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