48人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、期待してない。理由は分かりますか?」
彼は眉を顰め、重苦し気に言葉を捻りだす。
「……いや、結構。お引止めして申し訳ない」
あ、これ分かってない奴だ。んもー、これだから戦う意義に呑まれた奴はー。
内心面倒臭がりながらもすかさずフォローを入れる。こういう疑念を雑に流すと後で寝返るからなぁ…。
「あのですね? 一応言っておくと実力が足りないからじゃあないですよ?」
「…ほぅ」
緊迫した雰囲気が少し緩み、同時に彼から僅かに困惑した気配が感じ取れる。
「『セブンスソード』も『帝』もそうポンポンと取って代えられる実力じゃあない。勿論、俺たちもそうだ。
向こうが幾らでも戦力を補充できる可能性が高い限り、此方の役職者が撃破、或いは相打ちになるような事態は極力避けたい。
下手に功を焦って追撃した結果、各個撃破されるのが一番怖い。それに追撃のために本陣から離れれば、守っていた地点が手薄になる。
そこを攻めてこないほど相手は甘くはないでしょうよ。
……というかコレ、特別修練の質問ではないですよね?」
「それは、いやぁ…ははは」
俺は最後に少しため息交じりになる。特別修練で何か提案があるかと思えばそんなことか、といった風だ。
これにはスペクトル校長も苦笑いして、空気を切り替えるように脚を組み直した。
少しして、俺から顔を隠すように両手を浅く組むと彼は目を伏せる。
「…申し訳ない。この歳で貴方のように若く、強い方を知ってしまうとつい考えてしまうのですよ。
『私のこれまでの人生は何だったのだろうか』
『王は私のような老骨を捨て駒にすら数えてくれないのだろうか』、と」
「……」
最初のコメントを投稿しよう!