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「こっちだ。こっち」
そこに、なんか丸っこいのが居た。
初めてみるタイプだが多分、魔物の類だろう。
梨のような色合いにちょっぴり歪んだ球のような一頭身の体。丸々とした肉体からは申し訳程度のちょこんとした手足が伸びており、愛らしく感じる。
顔と思わしき部分は肌色。口は見受けられないが、愛嬌のある楕円刑の瞳が二つ並ぶ。
頭部(一頭身なので頭と胴体の区別も付かないが)に被った濃緑色のバンダナにはデフォルメされた和梨と洋梨の刺繍が施されている。きっとトレードマークなのだろう。
声の主であろう彼(?)はフルーツ入りのバスケットを持ったまま、すたたたた…ぴょん!と器用に木椅子の上に着地する。
急接近に少し怯むが、お見舞いに来てくれた相手に黙ったままも失礼だ。
「あ、えーっと…誰かの使い魔か何かか?」
「いやまぁフラガの使い魔だけどな?
俺だよ。ブノーマに捕まってた奴」
思考停止。
「――――はぁっ!!? アイツは人間だったぞ!?」
数秒掛けて記憶を反芻し現実と照らし合わせて、正気に戻る。
しかしその反応は向こうも予想していたようで、やれやれと一頭身で器用に肩を竦める。
「フラガの呪術でこんな体になっちまった。
まぁ、戻ろうと思えば戻れるんだけどな」
「こっちのほうがかわいいもん!」
「と、いう訳だ……」
「そ、そうか…」
ひょいと背後から軽く持ち上げられ、少女の腕に収められる。
(;- -)みたいな顔で項垂れているが、抵抗する気はないらしい。
ちょっとナンパしたぐらいでワド〇ディにすんなよなー、という愚痴を聞き流す。恐らくワドル〇ィ、というのが種族名なのだろう。
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