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「………」
再度、声にもならないため息を吐く。敵が敵なだけに外からだけとは限らない。
限界は、感じている。
凡そ思いつく対抗策、その全てが敵には見透かされているようだった。
どれだけ残酷な決断を下しても、相手はそれを上回る悪辣さと奇策を以て此方の首を絞めてくる。
手の平で踊らされる道化師、或いは奴隷。
技術と思慮深さを兼ね備えたゴブリン――そんな言葉が脳裏を過る。敵は容赦なく我々の幸いを奪っていくことだろう。
その幸いすら、時とともに擦り減っているのだが。
国王が視線を落とすのは収穫量とは別の書類。
「…………」
年々、出生率は減り、死亡率は増える。それだけでは収まらず作物の収穫量すらも年々減っている。原因は、未だに分からない。
じりじりと包囲網を縮められていく錯覚を覚える。それは姿も形も捉えられぬ悪辣なゴブリンか、それとも―――。
ふぅ、と短く息を吐く。漏れた呼気が微かな灯火を揺らす。
「それで、何の用だね」
「あ、仕事は終わったのか?」
蝋燭の灯りが届かぬ暗闇、丁度正面から気の抜けた返事が返ってくる。
影から気配もなく佇む姿は暗殺者か、長年王に傅く執事か。
国王――クラウスが空間属性の魔術師でなければ気づくことはなかっただろう。
ましてや彼は魔盲。並みの魔術師では魔力から存在に勘付くことすらままならない。
それがましてやこのヴァルザード王国最高戦力の一人ならば、敵国にとってどれほどの脅威になるか想像に難くない。
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