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女三人寄らば姦しい。ならば更に男が三人加わっていれば騒がしくなるのは必定だろう。朝の通学路にしては騒々しい小集団。
そこへ、いつの間にか白髪頭が一つ増えていた。リアクトは慌ててその容姿――背丈からして恐らく少年を認識する。
武器はなし。無手だ。もしかしたら暗器を持っているのかもしれないが判断付かなかった。
漆黒に赤が混じったズボンに同様のパーカー。自信か慢心か前面を開け、白地に真紅の紋様のシャツと艶めかしい鎖骨を惜しげもなく晒す。
防御性など微塵も感じられないラフな服装はヴィグザム学園の実用性を重視した頑丈な制服とは真逆そのものである。
相変わらず恐ろしく自然な隠形。少年への反応は主に二つに分かれる。
「あ、フラガさん。」
「……お手、柔…ら、かに」
「あら、フラガ。久しいですわね」
「選抜は真剣にするから、手加減はできないかなー。レイラは久しぶり」
「…びっくり」
「はぁっ!? こんなひょろいのが『白き英雄』!!?」
「え? あ? は? ちょ、はぁ!? レイラと知り合いなのか!!?」
その差は即ち、既知と未知。知り合いの三名は会釈を返すなり片手を挙げるなり思い思いの形で挨拶を返す。
だが残りの三名は言伝でしか知らない希少な野生動物を目撃した様子である。
内一人に至っては箱入り娘同然の彼女に男の知り合い―――それも国の英雄がいたことに斯様に動揺する。
「俺が英雄になる前にちょろっとねー。
だから、そんな『裏切られた!?』みたいな顔しない。俺とレイラさんの関係は色恋沙汰とは程遠いからね?」
「そ、そうですわ! 夢想大陸の手がかりとして興味があるだけでしてよ!?」
「そ、そうなん…ですか?」
恐る恐る尋ねる。これまで相思相愛だと思っていた恋人に間男が居たなどリアクトは考えたくもなかった。
今までの血の滲む努力の成果が否定されたかのような絶望だ。
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