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「都合、一緒の部屋で寝ることにはなったけど手は出してない。俺の好みは魔族だからね」
「ええ!その通りですわ。淑女たるもの、不義理な真似は一切していませんわ!!」
「………」
彼女の力強い肯定よりも英雄のそれはそれで末恐ろしい暴露に返す言葉を失う。
だが双方共に否定しているし、一先ずは安心――――
「と こ ろ で、選抜で手を抜くような不埒な真似をしそうな発言が聞こえた気がするなぁーーー。
俺が丹念に、この国の未来を案じて誠心誠意熟考した選抜試験なんだけどなぁ~~~~?」
「ヒエッ」
できなかった。大袈裟な振る舞いに背筋に冷や汗が伝う。優しいという噂とは裏腹に少年の口元が邪悪に歪んだ。
「ハハハソンナマッカーサ」
マッカーサって誰だよと内心で突っ込みながらも乾いた笑いが自然と口から漏れる。じっとりと全身が湿気る。
「……でも生徒の健康状態が日によって異なる、というのも間違いないか。
今日に限って体調を崩してしまう子も出てくるかもしれないね。
俺も鬼じゃあない。体調が悪い生徒に無理はさせられないよ」
{あ、あれっ…?}
不穏な気配が急速に薄れていく。火のない所に煙は立たぬ。どうやら噂通りの人物だったらしい。
ポン、と軽々しく肩に優しく手を置かれる。
「ということで、君は特別に直接俺が相手をしてあげよう」
「うぎゃあああああああッッ!!?」
絶叫しながら反射的に手を弾いてバックステップ。何てことを言い出すんだこの人は!!?
過労死する…!! 絶対過労死するって……!!
彼は弾かれた手と此方を交互に眺めると何か納得したのか小さく頷く。
まるで品定めだ。俺は露天に並べられた果物かよと無言で愚痴る。
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