48人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「悪くないな。あ、脅えなくていいよ。俺が相手するのは冗談だから」
「え、あ、ああ。了解しました…」
「ただ、通学路でも誰が話を聞いているか分からない。
無意識に流した情報が時に自分たちを追い詰めると覚えておけ」
「………はい」
苦言を呈した一瞬だけ、彼の視線が冷ややかなそれに変質したことが嫌でも分かった。
容姿は同年代でも実力は世界有数の猛者。彼からすればリアクトたちの振る舞いは迂闊過ぎたに違いない。
特に、今のヴァルザードは――――。
「ランド君を宜しく」
「…うっす」
すれ違う瞬間、短く呟かれた。
「それじゃあ、またねー」
そして彼はリアクトたちとは逆方向へ―――って!!
「ちょっ…フラガさん学園は!!?」
「ちょっと野暮用があってねー。選抜には遅れるかも」
ランドがリアクトの内心を代弁した。なんかこの人いつもこんな感じがするな、とも。
仕事があるからあまり見かけないのは分かるが学園に居なさ過ぎるのだ。
最近はブノーマへの威力偵察を単騎で行ったらしいが、それにしても無傷で帰還は少し話を盛っている気がする。
いや確かに偉業と言えば偉業なのだが大袈裟過ぎて実感が湧かないというか…。
外見からして鍛えている様子もない。仕事は熟しているのだろうが、不満がないと言えば嘘になる。
『伝説への挑戦』での立ち回りも見たが、技術よりも肉体性能や機転で相手を凌駕する場面の方が多かった。技量だけならリアクトやホイロンとどっこいどっこいだろう。
『白き英雄』の象徴たる『救世の白』―――不可視化の能力を孕んだ武器は隠密性には優れているだろうが、聖国の勇者が愛用する大剣と比べるとどうしても見劣りする。
その程度の実力しかない魔盲にしては好待遇過ぎるのだ。不満だって少しは出てくる。
先日亡くなった生徒もきっと昨日までのリアクトと同じ気持ちだったのだろう。
そもそも彼が英雄として扱われている理由が、魔族に奪われたヴァルザードの秘密兵器を撃破したからというのも解せない話だ。
挙句の果てに当人はその魔族が好みとかいう始末。どうして国王があんな人を英雄認定し、一時期とはいえ宝剣を預けたのか甚だ疑問である。
・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、ここまでが世間一般の認識。
最初のコメントを投稿しよう!