48人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
脈絡とこのヴァルザードを影から支えてきた血統。
その正統後継者が初めて見た日の目が今、この彼なのだ。
その裏でどれだけの凄惨な殺し合いがあったのか、リアクトは知らない。
その影がどれほど血に塗れているのか、推し量れもしない。
「…お疲れ様です」
そう返すのがやっとだった。少なくとも、今のリアクトには。
「全くな」
心底から嫌気を滲ませた声。刹那、その姿が掻き消える。
足手まとい―――身も蓋もない言葉が脳裏を過る。
常在戦場の心得は何処へやら、疲労がかさんでいるにしても油断が過ぎた。
{……負担は掛けられないな}
幾ら大人に混じり訓練しようリアクトのと実戦経験は無いに等しい。
一瞬の慢心が死を招く世界も慢心が無くとも歯が立たない理不尽も聞いたことがあるだけ。
決定的な境界を未だ踏み越えられないでいる。
「…はぁ、情けないよなぁ」
「どうした?」
ため息を吐く。ホイロンが小首を傾げて尋ねてくる。
「俺の実力」
「何言ってんだこいつ」
本気で怪訝そうな顔をされる。
世間一般からすると、学生の時分から外国の戦闘大会に参加するリアクトは強者の部類だ。
しかし、それは学生の範疇ではという話。各国の戦力と対等に渡り合えるほどではない。
ましてや、この国を侵略しようと画策する悪鬼共となど夢のまた夢だろう。
親父や義理父、『戦乱の英雄』とも異なる系統の強者―――ともすればあの異端集団と同系統の人間。
{あの人なら―――もしかしたら}
足りない力を埋めてくれるかもしれない。
生死の境界を見せてくれるかもしれない。
殺意の恐怖、刹那の凌ぎあい、生死を掛けた立ち合い。
この果ての無い徒労に、光明をくれるかもしれない。
だが――――。
最初のコメントを投稿しよう!