177人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、高いなぁとか言いながらも、サイトで最初に見付けたお菓子を買った。
「へへへ。夏蓮喜んでくれるかな。」
マンションのエレベーターを降りて、部屋の前まで行く。俺は、軽い深呼吸をしてから、チャイムを鳴らす。聞き覚えのある声で返事があって、鍵が開けられた。
中へ入るなり、夏蓮に抱き着かれた。
「…佑樹。会いたかったよ。」
「うん。俺もそれは…同じなんだけど…さぁ…。その前に、1回離してよ…。靴も脱げない…。」
「あっ、ごめん。」
慌てて手を離してくれた夏蓮は、ちょっと照れてる。俺を待ち構えていたんだな。
「…夏蓮。そんなに慌てなくても、この休みの間は、ずっと、君と一緒にいられるんだから。」
「それは、わかっているんだ。本当によく、わかっているんだけど…。」
「どうして、そんなに焦ってるの?」
「…それは。」
「それは?」
「わ、私達、遠慮しなくてもいい夫婦になったんだよな。なのに、私はここにいなくちゃならなくて…本当に、佑樹に会いたくて、会いたくて…会いたくて…。」
泣きそうな顔してる…。夏蓮が、こんなに俺に対して感情をぶつけてくれるのは、レアなんだよね。
普段の彼女は、俺が言うのもなんだけど、理性的で、理知的で、自分の感情をきちんとコントロール出来る人だ。
仕事の立場上、感情に流されて、判断を間違ってはいけないからだ。
そんな彼女は、俺の前だと、時々違う顔を見せる。
『今日から、彼氏な…』と言われたあの日から…。
「そうだよね。俺も夏蓮に会いたかったのに、いきなり離してなんて…駄目だなぁ…本当に…。ごめんね、夏蓮。」
俺は、まだ靴を履いたまま、夏蓮を引き寄せて、優しく唇を重ねたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!