王妃様と王子様

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夏蓮も少し落ち着いたみたいだから、俺は、とりあえず、リビングで着ていたスーツの上着を脱いだ。 何も言わなくても、夏蓮は、それをハンガーに掛けてくれる。 「…夕飯、本当にいいのか?」 「うん、大丈夫。駅弁ちゃんと食べたよ。今日はね、深川飯。」 「深川飯か…美味しそうだな。」 「実は、最近はまってるんだ。今度、帰って来たときに、美味しいお店に連れていってあげるよ。ちゃんと一人前ずつお釜で釜飯みたいにして出してくれるんだ、そこ。」 「本当か?!」 やった!食い付いた! 夏蓮の趣味が食べ歩きなんだって知ったのは、付き合い始めてからなんだよね。それを知ってからは、時間のあるデートの日は、必ず美味しいと評判になってるお店を事前にリサーチして、デートに組み入れていたっけな。 夏蓮が大阪に来てからは、東京に帰って来ても、なかなかゆっくり出来ないから、何かひとつ、美味しいものを、大阪へ帰るまでに食べさせようと努力してるんだ。 そんな中、たまたま佐野と飲みに入った小さな小料理屋で出された深川飯が気に入った。なんやかんやで、気が付けば、そこの暖簾を潜っているんだ。 ネクタイを緩めながら、買ってきたお菓子を差し出す。 「これね、言ってたお茶菓子。ちゃんと東京駅限定だよ。」 包みを見た途端、夏蓮は、狂喜乱舞していた。 「ゆ、佑樹!何で、私が一番食べたいと思っていたお菓子が、わかったんだ?なあ、どうしてだ?なあ!」 「落ち着けよ、夏蓮。…俺は、夏蓮が出した条件に合うもので、ふたりで食べ切れるものを探したんだよ。そうしたら、これが、量的に一番よかったんだ。」 「そうなのか…。もしかして、高いってボヤキながら買わなかったか。」 なんでわかるんだ…。 「うん、確かに高いよね。でも、さすがに店先で、それは言わないよ。第一、俺達が高いと思っても、他の人が、そう思うかどうかは、わからないよ。実際、見てたら、結構な数売れてたもん。」
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