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夏蓮は、ニコニコしながらお菓子を頬張っていた。こう言うところは、年齢関係なく女の子だよな。本当に。
俺は、そんな夏蓮の隣で、まったりと珈琲を飲んでいる。そして、この間、別れてから今日までのことを、夏蓮に話をしていたんだ。
とりとめなく、いろいろ話している内に、俺が佐野に“王子様”って呼ばれたことを話していた。
「佐野とさ、話をしてたらさ、あいつ、俺のこと王子様とか言うんだよ。おかしいだろう。」
「佑樹が王子様?!何故、唐突に王子様呼びなんだ?」
夏蓮は、あいつは何を考えてるんだ?…なんて、首を傾げていたが、ふっと笑うと
「まあ、私にとっては、佑樹は、白馬に乗った王子様には違いないけれど…。」
なんて、さらりと流された。今度は俺が、首を傾げる番だった。
「ええっ?!あのさ、なんで、俺が白馬に乗った王子様に進化してるの?それこそ、どうしてそうなるのさ?
ねえ、夏蓮。知ってる?…俺、乗馬としたことないんだよ。」
「クスクス。例えだよ、例え。なあ、物語のお姫様を誰が助けに来るか、迎えに来るか、佑樹は知ってるか?大抵、白馬に乗った王子様なんだよ。
私にとっては、佑樹は、白馬に乗った王子様と同じくらいに格好いい素敵な存在だ。私を助けてくれるのは、お前しかいないだろう。」
そんな風に言われたら、格好着けたくなるよ、夏蓮。
「ありがとう。夏蓮。…でもね、王妃様の隣には、やっぱり王様がいなくちゃ。
俺は、いつか君の横で、余裕綽々の顔でドンと構えていられる様な器の大きな王様になるよ。
だからね、少しだけ待っててくれる?」
「バカだなぁ…王子様だろうと、王様だろうと、佑樹は佑樹だよ。私は、今、こうやって隣に座っていられるだけで幸せなんだ。何て言ったって、新妻なんだからな、私は。」
胸を張ってそう言う夏蓮を、俺はすごく愛しいと思ったんだ。
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