王妃様と王子様

2/12
174人が本棚に入れています
本棚に追加
/436ページ
親友の佐野は、俺の奥さんを王妃様と呼ぶ。 彼女は、元々、俺達の直属の上司で、最初は付き合ってることを内緒にしていた。だから、二人のことを話す時、佐野は、そんなニックネームと言うか、隠語を作って、俺と話をしていたんだ。 だってさ、夏蓮は、内の会社じゃ、将来を嘱望されていて、社内初の女性部長になるって、専らの噂だったし、実際、彼女がこの10年やって来た仕事は、その辺のへなちょこ平社員じゃ、到底無理なレベルで、みんなが納得するような実績を、沢山苦労して、きちんと積んで来たんだ。 俺達からしたら、そんな彼女は、雲の上の人。憧れの上司なんだぞ。 入社半年目のことさ。出先のカフェで、彼女から、いきなりさ『お前、今日から、私の彼氏な。』なんて言われてみろよ…。 ぺーぺーの平社員だった俺と彼女が釣り合うのかって、どれだけ悩んだと思う。まだ、なんの実績も積んでない俺を、彼女は、職権乱用までして、彼氏にって言ってくれたんだ。気持ちに応えなきゃ、やっぱり男じゃないよな。 俺は、意を決して、恋人になることを決めたんだ。 それから、色々あって、二人のことをみんなに公表するまでの1年弱、佐野は、俺達の秘密を守ってくれていたんだ。 そのための王妃様呼びだよ。本当に、持つべきものは友達だな。感謝しなくちゃならないよね。
/436ページ

最初のコメントを投稿しよう!