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結婚式の後、夏蓮は、あまりゆっくり出来なくて、甘い時間は、すぐに終わってしまった。
「…ごめんな、佑樹。」
新幹線のホームで、夏蓮は、泣きそうな顔をしていた。
「謝らないで、夏蓮。これは、仕方ないことなんだよ。君のせいじゃないんだから。ほら、そんな顔しないの。
離れたくないのは、俺も夏蓮も一緒でしょ。今週末、また大阪へ行くから。ねっ。我慢だよ。」
こんな時の夏蓮は、普通の女の子だ。歳が俺より上であろうと、仕事上の上司であろうと、そんなのは、関係ない。ここにいるのは、結婚式を終えて間がないのに、一人大阪へ戻らなきゃならなくて、寂しさに震えてる女の子だ。
「…我慢する。…仕事も頑張る。」
「うん。その笑顔だよ、夏蓮。君は、絶対に笑ってる方が可愛いんだから。」
可愛いって言葉に、夏蓮は反応して、頬を染める。そう、こういう表情が可愛いんだよ。元が良いんだからさ。
そんなやり取りは、それから、ほぼ毎週行われた。
東京駅で大阪へ向かう夏蓮を見送る俺。
新大阪駅で東京へ帰る俺を見送る夏蓮。
唯一、二人がゆっくりと時間を共有出来たのが、夏休みだったんだよ。
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