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「梶尾、昼飯行かないか。」
「ああ、ちょっと待って。」
「また、何かやってんな。お前さぁ、それでなくても、仕事増えてるし、余分にお勉強させられてんのにさぁ…。ちょっとは、大人しく出来ねぇの?」
「大人しくなんてやってらんないよ。これは、すごく大事なことだから。仕事よりも、勉強よりも、大事なことなの。」
「ほほう。真面目人間の梶尾君が、仕事も放り出してやろうとしてることってなったら、王妃様絡みだな。…それで、王子様よ、何してんのさ?」
「なんだよ、その王子様って?」
「だって、王妃様の連れ合いなら、王様だよな。だけど、お前は、まだ王様の器じゃねぇだろ。だから、一段下の王子様だよ。」
「…変な呼び方やめてよ。それに、もう隠す必要ないんだから、夏蓮のことも王妃様呼びしなくていいだろう。」
「いや、もう習慣になっちまっててさ…はははは…簡単には、やめられねぇわ。ま、鋭意、努力するけどな。」
「頼むよ。」
「で、何してるの?」
「旅行のプラン作ってるんだ。新婚旅行行きそびれたからさ。」
「そうか。悪い、からかって。…王妃様、残念がってたんじゃないのか、新婚旅行行けなくて。」
「うん。口には出さないけど、かなりショックだったとは思うよ。だからこそ、代わりになること、やってあげたいんだ。夏休み使って旅行行こうかと思ってさ。」
「…今からだと、なかなか宿取れないんじゃないか?」
「有名な観光地じゃあ、連泊とか無理だよね、どう考えても。だから、いろいろと裏技使って、あちこち行こうと思ってるんだ。」
「それで、がさごそと、やってるわけね。」
「そう言うこと。」
「邪魔して悪かったよ。何でもいいなら、俺、買ってきてやるよ。」
「ありがとう。でも、切り替えは必要だしね。昼からの仕事に差し障りあるから、やめるよ。」
帰ってから、またやればいいだけの話さ。
「お待たせ、佐野。行こうぜ。何食べる?」
心はもう昼御飯へと向いていた。
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