王妃様と王子様

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「おっ、梶尾。おはようさん。大きな荷物だけど、終わったら、直で大阪行くのか?」 「ああ。家に帰る時間もったいないから。」 「そうだよなぁ。新婚さんなんだから、早く会いてぇわな。」 「そういうお前は、柚香さんとどこか行くの?」 「柚香には、申し訳ないけど、今年はパス。この休みの間に、ちょっとでも山積みの課題を頭に入れたいんだ。お前みたいに、頭がよくないからな。」 「何言ってんの、佐野の方が頭いいに決まってんでしょ。なんだかんだ言いながらも、結果残してるんだから。 もし俺が、そう見えてるんだとしたら、とんだ間違いだよ。俺も努力してるだけなんだから。自分で自分を追い込むくらいじゃないと達成できないから、がっついてやってるだけなんだよ。 結果的に、今のところは躓かないでやれてるだけ。それだけだよ。」 「…そうなのか。」 「そうだよ。なあ、佐野。お前さぁ、もっと自分に自信持てよ。大学の時から、俺の背中、お前は、何度も押してくれたよな。俺よりも、考え方は、ずっと大人だと思うんだけどな。 結局さ、俺達、お互いに無い物ねだりしてんだよ。」 佐野とは長く付き合って来た。その分、俺は、多分、恋人の柚香さんよりも、こいつを知ってる。 いつでも笑顔で、前向き。普段の軽いノリに加えて、冗談も嫌味なく言えるセンスは、俺には真似できない。他人は、そこだけ見て、底の浅いやつだとか、軽薄だとかチャラいとか言うけど、こいつの本質を見てないよ。 こいつは、努力家だから、ちゃんと形に出来る男さ。ただ、自分の能力値の高さに気付いてないだけなんだ。 だけど、今は言わない。言ったら、調子に乗るからな。 「まあ、そう言うことだから、気にすんな。佐野は、佐野らしく生きていきゃいいのさ。」 俺は、にこやかに、そう言ったんだ。
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