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「…その後は、どうしたんだ?」
夏蓮は、佑樹の話を聞いて、その後が気になって仕方ない。
「う~ん、何て言えばいいかなぁ。北詰さんね、結構、面白い人でさ。波長が会うって言うのかな。なんか、よくわかんない内に友達になってた。」
「はぁあ?!」
夏蓮は、佑樹の友達になっていた発言に、目が点になるしかない。
「なんて驚き方するのさ?」
「なんでって、それは、私が聞きたいわよ!
何故、そんな涼しい顔できるのよ、佑樹?
私は、佑樹が、誰とどんな風に付き合っても、文句は言わない。それが、佑樹が上に向かって走っていくために必要な人間なら、絶対に何も言わない。でも、今回は、意表を突きすぎよ。
本当に、もう、佑樹の心って何処まで、広くて深くて、寛容なの?
普通ね、いきなりやって来たライバル社、それも内より、ずっとずっと大きい商社のトップセールスマンと、友達になるなんてあり得ない。言っとくけど、私には、絶対に無理だからね。」
「…そう言うものなのなんだ。」
「自覚なし…内の旦那様は、天然だったんだ。」
「そんな風に思ってるの。ちょっとショックだ。
ねえ、率直に言ってくれる。俺、北詰さんとは、付き合わない方がいいの?」
「ごめん。言い方が悪かったよ。佑樹は、佑樹の信じる様にやればいいよ。ただ、私を心配させるような人間関係だけは、築かないでくれ。
仕事の面で、私は、この先、佑樹のスピードについていけないかもしれない…。」
「何言ってんのさ、夏蓮は、もっと上に行くんでしょ。そんな弱気なこと言わないの。どうしたんだよ。いつもの夏蓮らしくないよ。」
「…いつもの私か。そうだな。ちょっと変だな、今日の私は。
今の私は、男である佑樹が、女の私が持っていないものをもっているから、嫉妬してるのかもな。」
夏蓮は思っていた。上司として、雛鳥を世話する親鳥の様に、面倒みる立ち場でいられるのは、本当に後、数年なんだと。佑樹が、今の自分と同じ年齢になる頃には、きっといろんな事で、追い抜かされてしまっているだろうと…。
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