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「あ~あぁ。遂にお前も、親父かよ。」
「何か不満でもある?」
翌年の3月末。秘書課の先輩に、新年度に向かっての準備を頼まれた俺と佐野は、資料を整えながら、話題はいつしかお互いのことになった。
「いや、不満なんてないよ。ただ、梶尾君が最近、とってもご機嫌いいのは、やっぱり、王妃様が大阪から帰ってくるからなんだろうし、子供が生まれるからなんだろうなって思ってさ。
幸せ一杯な梶尾家を思い描いて、いいなって思ってるだけ。」
「何言ってん。お前だって、もうすぐ柚香さんと結婚するんだろ。あっという間に、お前も親父さ。」
「…そう言うもんかねぇ。」
「何、爺くさいこと言ってんの。辛気くさいぞ。」
「だってさぁ。柚香との結婚は、待ち通しいけど、式の準備で、あんなに親父達が出張って来るとは思わなかったからさ。要らん気を使ってんの…。本当に疲れるよ。」
「それは、仕方ないよ。親は、いつまでも親だし、幾つになっても子供が可愛いんだから。口も手も出したくて仕方ないんだよ。俺は、去年、いやというほど、それを学ばせていただきました。
ところで、お式の費用とかは、自分で出すの?」
「…いや、両方の親が出すことになってる。」
「なら、いいじゃん。」
「確かに、費用面では助かるけど…。」
佐野の言葉が、少しばかり引っ掛かった。
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