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「大人ってね、子ども以上に複雑なんだと思う。それは、お兄ちゃんもじゃない?」
屈託のない笑顔で、少年を見上げる女の子。この女の子は、少年の黒くすさんだ気持ちをぬぐってくれるようなそんな純粋な目をしていた。そして、少年と同じような環境であったのに、自分とは違う道を歩んだ女の子。
「ありがとう」
『え・・・?』
女の子の言った言葉に耳を疑った。それは少年が言われたことのない言葉だった。
「助けてくれてありがとう」
にっこりと笑う女の子は見えているが、少年は何と答えていいかわからないでいた。
『えっと・・・』
「お兄ちゃんが助けてくれたんだよ、あたしを」
女の子は少年の手に触れようと手を伸ばす。けれど少年は透けている。触れられるはずがないのに、少年は温かさを感じたような気がした。
『・・・。変なやつ』
「うん、変なやつだよ。お兄ちゃん、名前を教えてよ」
『レイ』
「レイお兄ちゃん、これからもよろしくね」
女の子が笑うと、少年も照れ臭そうに微笑んだ。笑うことなんて何年ぶりだろう。少年は、今までずっと人に意地悪をして困らせてきた。けれど、少年がほしかったのは、この女の子のような笑顔だったのだと気が付いたのだった。
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