コウボクの里

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 ルグランは部屋に入るなり話しかけた。 「婆さん、こいつのことなんだけどよぉ」  それを遮る形で老婆はライトに声をかける。 「あたしはメゾルテ。みんなメゾ婆と呼ぶ。お主は?」  メゾルテの口調はまさしくその場の長であろうというもので、その声にライトは呼応した。 「ライトです。ただし仮の名前です。本名は思い出せません」 「ほぉ、記憶を奪われたか。その割には普通に会話が出来ておるのぉ」 「過去のことや学んだことは覚えています。ただ人の名前や名称が思い出せません。」 「では世界のことも覚えていると?」 「ああ、俺に家族がいたことも、あっちの出来事とかも覚えているが全て名前だけが空白だ」  メゾルテは落ち着いたまま静かに話を続けた。 「さて、ルグラン。なぜこやつをワシのところに連れてきた。」 「んー、やっぱさここで生きるにはデイジは必要かなと思ってね。こいつ存在すら知らないから」  相変わらず軽い感じで答えるルグラン。少し呆れ顔でミキリが言う。 「なに、こいつデイジ使えないの?あーどうりで色が着いてないはずだわ」  ライトは文句を言いたそうにするが、諦めたようにメゾルテに聞いた。 「そのデイジってやつを俺も使いたいんですができますか?」     
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