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人間と希少種が上手く共存しているところもあるらしいが、ほとんどの土地ではそうではない。
何故なら、希少種にとって、人間は食料だからだ。正確には、人間の血が、彼等の生きる糧となる。だから人間は希少種を恐れ拒絶し、希少種は生きるために人間を食らう。
俺も、夜の森で希少種に襲われたことがある。あの男は何日も食にありつけていなかったのだろう。血走った赤い眼で俺を捉えると、素早く距離を詰め、俺の首を狙って牙を突き立てた。
しかし、強烈な痛みに襲われた直後、大地に引きずられるようにしてずるずるとその場に倒れたのは、俺ではなく、俺を襲った男の方だった。苦しみにのたうち回る様子すらない大きな身体を見て、俺はすぐに悟った。この男は死んだのだと。
そんなことが何度も立て続けに起これば、自然と気付いてしまえた。人間には何の害も無いけれど、人ではない者が口にすれば死に至る。何故かは知らないけれど、そんな血が、俺の身体には巡っていると。
彼等は人間とは違い、身体を裂かれても、焼かれても、折られても、水底に沈められても、死なない。空腹で餓死する以外に死ぬ方法がない。
その為、この特異体質を買われ、齢十三の身でありながら、俺は仕事を与えられた。人間を殺した希少種のみを処刑する仕事を。
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