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「"形変わらぬ思い"は、例え、どんな姿になろうとも変わらず、あなたのことは思い忘れないという意味があるとのことです。ディフィレイクレアらしい花言葉ですよね。まあ、なんといえばいいのやら……今日ユーリに連れてきてくれた花畑は、例え姿が変わっても、ここへ来たことのことは忘れない、私の思いを知っておいて欲しいのです」
「レティお姉様……」
「忘れませんし、これからも私は覚えています。だから、今日は本当に連れて来てくれてありがとうございます、ユーリ」
ぎゅっと手を掴み、ありがとうございますと頭を下げて顔をあげる。すると、ユーウェイン様は目を見開きながら、参ったなあと独り言を呟く。
「レティお姉様。どうして、貴女は、僕が欲しい言葉をいつも与えてくれるのですか……その言葉だけでも僕は救われます」
ぎゅっとまた力が入る。少年と青年の間に立つ彼の表情はまだやはり少年のあどけない表情が残っていて、私はこの景色と彼の表情を忘れることはないだろう。
少しでも彼の心が救われたらと思う。私はただのしがない使用人で仕えることしかできないのだから。
せめて、言葉で救われたらと考える。また、ディフィレイクレアの花畑を一瞥し、私から自然と彼の手を離していた。ユーウェイン様は、ディフィレイクレアの花を一輪とる。
「後で飾っておいて欲しいです、レティお姉様」
「はい、わかりました」
そう告げると、またいつもと同じように笑うユーウェイン様。その姿を見て一安心しながら、私とユーウェイン様は今度こそ、イサヘイムの森を後にした。
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