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フロウリース領の北に位置する大きな森、イサヘイムの森。その森の中に私たちはいた。
ユーウェイン様曰く私に見せたいものがこの森の中にあるらしい。彼に着いてきたのはいいが、目的がわからないまま、森の中を歩き続けて2時間弱は経過していた。
「はあ……はあ……あ、あのユーリ!!」
「はい! 何でしょうか? レティお姉様?」
「わ、私たちは、一体何をしているのでしょうか!?」
そろそろ体力の限界がきた私は、しびれを切らして先導して歩くユーウェイン様に問いかける。
私の問いかけにユーウェイン様が立ち止まり、振り向いては最高の笑みを浮かべる。
「散歩ですね」
史上最高と言わんばかりのキラキラした微笑みに私は深いため息を吐き頭を抱える。
「あのですね、ユーリ。簡単に散歩ですね、と涼しい笑顔で言わないで頂けますか!?」
「レティお姉様……それは、僕の真似でしょうか?」
「うっ……! そ、そうですけど!」
「何ですか、その茶目っ気は! 頑張って僕に似せようとしているところが可愛いです!」
「あ~その物真似は忘れてください!」
「いいえ、忘れません! むしろ、未来永劫覚えています!!」
「お、覚えてなくていいですから! と、ともかくも、目的地はまだですか?」
慣れない物真似はしないものだと思いながらも話題を本題へと戻す。そう元々の目的は、彼が私に見せたいものが何かだ。
ここまで時間がかかるものだと予想出来ていなかった。片道で2時間弱はかかるとなるとお屋敷まで戻るのにもまた同じ時間を要することになる。
「冗談はさておいといて……目的地は確かもうすぐなんですが……」
「まだ歩き続けるなら、これ以上時間をかけられないので帰りますよ?」
「ま、待ってください! レティお姉様。目的地は近い……あっ!!」
ユーウェイン様は辺りをキョロキョロと見渡し、私はまだ時間がかかりそうなら帰ることを催促する。
これ以上はユーウェイン様には悪いがチェルシーさんの説教の怖さは勝るものはないので。来た道を戻ろうとすると、ユーウェイン様は、いきなり大声を挙げる。
「何かありましたか、ユーリ?」
何か目的地の目印を見つけたのか私も視線をそちらに寄せる。だが、ユーウェイン様はふふっと不敵に笑い、目の前に立っては私の視界を手で奪う。
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