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唐突に暗くなり、目にはユーウェイン様の温かい手の体温が感じ取る。この状況は一体と冷静に考えていると、ユーウェイン様が口を開く。
「ええ、ありました。レティお姉様にどうしても今日見て欲しかったものです!」
「それはわかりましたから、手をどけてくれませんか?」
「ふふっ。すぐ見てしまうとサプライズの意味がなくなるので。僕が数を数えるので、0になったら見せてあげます!」
嬉々とした声色だ。その声色に私は甘い。全く困ったお坊ちゃんだと思いながら、わかりましたと告げる。
「楽しみにしてますから、数を数えてください」
「はい! それではカウントダウン10、9……」
ユーウェイン様は数を数え始める。嬉しそうな声色に合わせて私も自然と声を重ねていた。
そして、0を迎えた瞬間……私の視界には映り込んだのは、眩しいオレンジ色の夕日を背景に一面に広がる白いお花畑だった。私を目を開かせ、その花畑へと近づく。
「これは……ディフィレイクレアの花ですか?」
ディフィレイクレア。それは白く透明な花の名前だ。フロウリース領だけにしか咲かない花である。
その花は白く透明で朝、昼、夕方、夜によって花びらの色が変わる。美しい花だ。ユーウェイン様は得意げに笑う。
「はい、そうです。ディフィレイクレアの花は、本来、白く透明な花ですが、朝、昼、夕方、夜によって花びらの透明度さから色が景色と同化してしまい、色の変化が楽しめる美しい花です」
「まさかこんな一面に咲いてるディフィレイクレアを見るのは、初めてです! いいえ、人生初といってもおかしくはないです!!」
「ふふっ。レティお姉様の初めてを共有できて嬉しいですね」
「……意味合いが違う意味に聞こえるのは気のせいですか?」
いえいえ、気のせいですよと笑うユーウェイン様。私は呆れながら、再度ディフィレイクレアの花畑を見渡す。この花は、とても希少で一面に広がる花畑を見るのは初めてだった。
何故なら、この色の変化を楽しめる花は、人々にとって一時期観葉植物として流行りいつしか人工的に咲く花しかなく、むしろ、人の手が加えられていない自然な花のほうが、希少となってしまった。
それにこの花は私が好きな花の一種でもあり、まさかとはっとなりユーウェイン様を見る。
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