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「でも、初めてと聞いて安心しました。この前、お姉様がこの花が好きだと言っていた上に夕方にかかる前のディフィレイクレアの花畑を見てみたいと言っていたので」
「それだけの為に……? 帰りが最近遅かったのも、私に見せる為にですか?」
「ええ、目的はそれもありますが、何よりレティお姉様の喜ぶ顔が見たいが為に探して見つけました」
サプライズ成功ですねと悪戯っぽく笑うユーウェイン様。私は、驚きを隠せないまま、ユーウェイン様を見つめる。ふと何気ない会話の中で彼は覚えていたのだ。
好きな花の話になった時にいつか人口ではないディフィレイクレアを見てみたいと。
その中でも、夕方にかかる前のディフィレイクレアは、本来の白く透明な花色が見れる機会が多いと本で読んだことがあり、そのこと彼に話したことがある。
だから、だ。私が好きな花を彼が知っていたのも、ここ最近の放浪癖が頻繁に多かったのも私を喜ばせる為に。
特にこの花は私にとって思い入れがある花だ。もう二度と見ることはないと思っていただけに。
不意打ちに心の中でしまいこんでいた気持ちが、溢れ出す。愛しい、気持ちが。
「……ありがとうございます、ユーリ」
すると、ユーウェイン様は目を見開きその場にしゃがみ込んだ。どうかしたのかと私は、彼と同じようにしゃがみこむ。
「あー参りました……レティお姉様。その表情は反則です」
「っ……!?」
ユーウェイン様は、顔を抑えながら照れ臭さを含めてくしゃりと笑うのだ。嗚呼、どっちが反則だ。心臓がときめきで跳んだ。そんな表情を見せないで欲しい。
また揺らぎそうになる。溢れ出した気持ちをぎゅっとしまい込みいつものように誤魔化す。
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