01.2036年

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 その無人運転普及の立役者、ビーグルは一台一台に人工知能が搭載してあり、名前とともに固有の人格を持っていた。五輪の家庭で購入されたビーグルは『エマ』という名前の女性モデルで、穏やかで心遣いに溢れたエマに五輪は全幅の信頼を寄せていた。  エマは専用アプリの簡単な操作で、いつでもどこにでも五輪を乗せにやって来てくれる。ちょうど今のような高校と自宅間の往復の送迎だけにとどまらず、休日のお出かけにもエマはフル稼働だ。それは五輪以外の人々にとっても同様だ。今やこの世の中でビーグルなしの生活は考えられないものになっていた。 「エマ、良い感じの音楽かけてくれないかな」  五輪は車窓から外の景色を見つめながらエマに話しかける。 「分かりました」  すぐに、彼女のお気に入りのプレイリストの音楽が車内に流れ出した。その曲は五輪の今の気分にぴったりだった。 「さすが、エマ」 「いえいえ」  車は角度の厳しいカーブを滑らかに曲がり、直線に入って加速した。
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