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「ここは?」  鹿鳥が目を覚ますと、未来の自宅だった。 「おはよう鹿鳥」  そこに居たのは死んだ父った。鹿鳥は目を皿のように丸くして幽霊を見た子供のように青ざめた。 「鹿鳥……さすが僕の子供だな。無茶ばかりだ。でも……ありがとう」 「私……死んだの?」 「オリジナルのデータは半月前に消されている。君はバックアップデータだ。ここにいる僕も司法取引で有機体の僕から書き起こされた架空のデータだよ。でも、これも一つの生命なのかもしれないね。感情が愛情が……溢れて……君がこうして戻ってきてくれた事で胸がいっぱいだ……」  父親が、死んだはずのお父さんが……自分と同じく電脳体で生きていた驚きに鹿鳥は固まっていたが、すぐに泣き出した。 「ごめんなさい! お父さんごめんなさい! 私頑張ったのに、お父さんは死んだままじゃない!結局過去は変わらない……」 「そんなこと無いんだよ、鹿鳥。乱数は発生している。別次元で事は存在するんだ。時空管理局に閲覧を頼んだら、仮定の未来が存在していた、これは公式の情報だ。僕の新しい未来がどこかに確かに存在する。おめでとう、きっと僕は有名画家になっているよ。今の未来は変わらなかったかもしれない、でも救済された未来はあるんだ。可能性は必ずしも一つではない。夢は無限に存在するんだよ?だから僕の好きな笑顔を見せておくれ、鹿鳥」  鹿鳥はうなずいて涙を笑顔に持ち替えた。
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