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二
「おはよう! 芳生くん」
「鹿鳥、おはよう。今日も濡れる雨だね」
梅雨も折り返し時期になり、例年より多い雨量に芳生は毎日頭痛が続き憂鬱だったが、鹿鳥と触れ合うと気持ちが癒やされた。
「本当に、レインブーツ履いていても足が悪いよね。はあ、夏が恋しいわ」
鹿鳥のブラウスが霧雨に濡れて肌がうっすら透けている。ハナミズキのように凛と涼やかに佇みアルカリ性に彩られたスミダノハナビを弄んでいた。気持ちのいい女ぶりだ。おとがいに滴る雨をすっと指で拭い、此方を振り返る。
「さあ、学校遅れちゃう! 行こう!」
気鬱な曇天も彼女の笑顔があれば、天使の梯子が射すというものだ。
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