守り刀と対魔師と呪われた桜の木

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「……そうでしたか」  すっと、義明の目が鋭くなった。私に一瞬目配せをすると、義明は木の幹に手のひらで触れた。 「なにするの?」  私が尋ねると、義明は無言で学ランを脱ぎ私にそれを放り投げた。 「わっ……」  慌てて受け止める。白いシャツ姿になった義明は腕まくりをすると、いきなり木の枝に足をかけた。 「ちょ、何してるの……」 「桜の季節は終わったからな。咲かせるしかないだろ」  いや、だから答えになってないってば。  義明は危なげなく木をするすると登っていくと、やがてひときわ太い枝の上に腰を落ち着けた。 「今日花! 俺の上着のポケットに瓶が入ってる。こっちに寄越せ!」 「わかった!」  指示され、私は学ランのポケットをごそごそと探る。指先にかつりとガラスの当たる感触がした。  取り出してみると、試験管のような筒状の瓶の中に真っ白な粉が入っていた。  ……これ、中身はただの食塩。一キロ三百六十円を瓶に移し替えただけ。こんな道具で術をかけてしまうのだから、つくづくこの男の能力は得体が知れない。 「行くわよー」  私がえい、と瓶を放り投げると、義明は危なげなくそれをキャッチした。 「今日花、さくらさんを頼む。彼女の願いに語りかけてくれ」  その一言で私は義明がやろうとしていることがだいたい分かった。要は、さくらさんの未練――お花見の約束を果たそうっていうのね。  私はさくらさんに向き直ると、彼女の手をそっと握った。 「あの……?」  戸惑った様子の彼女に私は笑いかけた。大丈夫、なにも怖いことはないから。 「私に教えて。あなたの思い描いたお花見を」
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