守り刀と対魔師と呪われた桜の木

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「ところで、今日花。今回の件、なんか変じゃないか?」  使った道具の後片付けをしながら、義明が不意にそんなことを言った。 「未練が残ってあちらに行けない霊なんて、正直な話ありふれてる。俺だって今まで何回か夢想写術を使って対魔してきた。だが……悪霊化していたのは初めてだ」 「確かに。さくらさんだって綺麗な魂の持ち主だったし、悪霊化するなんて到底思えないわね」  私が答えると、義明はちらりと桜の木の根元に視線を向けた。私もそれを追う。  私たちの視線の先には呪詛のびっしりと刻まれた石が落ちている。今はもう、先ほどまでの強い邪気は感じない。 「十中八九、これが原因ね」 「ここに刻まれた呪詛が、さくらさんの魂を乗っ取って悪霊化させた、か」 「ええ。しかも刻まれた文字はくっきりとしていて、まだ新しい。埋められたのは最近ね」  一体だれがこんなことを。私と義明は顔を見合わせて、うーんとうなった。 「……まあ、あとはベテランに任せよう」  それが賢明かもね。義明はポケットからスマホを取り出すと、陰陽寮の番号を呼び出す。 「もしもし、若松です。筆頭を……」  それを背後に聞きながら、私はもう一度石に触れてみた。 「何も感じないか」  ひんやりと冷たい感触が指先に触れる。ただそれだけだった。 「よし。帰るぞ」  電話が終わったらしい。義明の声が私を呼ぶ。 「今日の夕飯なににする?」 「あー。スーパー行ってから考える」  いつも通りの他愛のない会話をしながら、私は本日の夕食に思いを馳せるのだった。一仕事終えた後は、ご飯がおいしいもんね!
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