守り刀と対魔師と、夢の跡

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 義明は後ろ飛びでそれを避けつつ、私の冗談に軽い調子で返す。 「お前にこの力を渡すわけにはいかないんだよ。……ってことで、大人しくお縄につきな」  義明はそう言うと、刀を一閃。びゅう、と一陣風が吹いた。 「陰陽寮対魔局所属、対魔師・若松義明。岩融――いや、弁慶。お前の中の闇、祓わせてもらう!」  凛とした声で叫んだ義明。それに応えるように、蔦状になった靄が鞭のように義明の足元を叩いた。また硬度を増したのか、触れた先から地割れが起きる。  それを飛んで避け、宙で体勢を変える。義明が刀を振るう。 「風刃明来!」  風の刃が放たれる。縦横無尽に飛び回ると蔦を断ち切る。  宙に霧散していく靄。その中に私は一瞬、赤く鈍く光るものを見た気がした。 「義明!」  私が叫ぶと、義明はさっと視線を辺りに走らせた。 「……あれが奴の核――魂か」  ぎゅっと義明の手に力がこもる。  触れた手のひらから彼の迷いが、揺らぎとなって私の中に伝わってきた。  だから私は背中を押す。 「……義明。やって」 「だが、お前はあいつに食われかけた」 「大丈夫。もう絶対、諦めたりしないわ」  たとえ魂が半分持ってかれたとしても、体がボロボロになったとしても、私は生きることをあきらめたりしない。  だって――。 「……主を悲しませるようじゃ、守り刀失格だわ!」  ふっと義明の口から笑みがこぼれた。  目の前には強大な敵。これっぽっちもこの状況に似つかわしくない、暖かくてやわらかくて、私の好きな微笑みだった。 「……その言葉、忘れんなよ」  義明は柄を握る手に力を込めると、一歩踏み込み、靄の中で鈍く光る、核をめがけて刀を突きだした。  キィィンと、刃が硬いものにあたる音がする。私の身にはビリビリとした衝撃が走った。  でもひるんだりしない。この隙を逃さないように、私は自分の力を靄へと流し込んだ。  触れた箇所から力がこぼれだし、岩融とつながる。 「今日花、いけるか?」 「……うん、大丈夫。もうすぐで捉えられそう」  針の穴に糸を通すように、小さな小さな穴にそっと力を注いでいく。次第に私と岩融の霊力は混ざり合い……。 「――見えた」  私の脳裏に、ある光景が映った。
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