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眩しいと思った。
暗い訳でもない、明かりのついた屋内にずっといたのに、扉を開けて感じた日の光は電気の明かりとは段違いだと思い知らされた。
拓真が停めていた車の助手席に乗せられ、焦がれていた世界を車窓から眺めるも、通り過ぎていく景色はどこか遠く、異世界のようにすら感じた。
「周平、久し振りの外はどう?」
運転席でハンドルを握る拓真に問われるも、すぐには答えが思い浮かばなかった。
「――緊張する」
「ええ? そうなの? そんなもんなんだぁ」
隔離された世界から外に出て、果たして今の俺は拓真以外の人間に、他人に受け入れてもらえる存在なのだろうか。
少しすると、拓真が時間貸駐車場を見つけ、そこに車を駐車させた。歩いて程なくして、今の俺の心境にはあまりに敷居が高すぎる、見るからに高額そうな雰囲気の美容院に辿りついた。
***
髪型が変わると人の印象はかなり変わるとは言うが。
人から受ける印象だけでなく、自分の心も変わるのだと思った。
ああ、そうだ。俺はこうだった。こういう人間だった、と。
「周平、かっこいい。惚れ直しちゃうね」
髪型を整えて見目が良くなった俺に、拓真は上機嫌だった。
結婚式用のスーツを購入するために再び駐車場に向かい、車に乗った時、拓真は俺の頬を両手で包み、うっとりとキスをした。
人気がないのを確認したとはいえ、拓真の部屋の外で接触されたことに身体が無意識に反応した。拓真の肩を掴み、引き剥がす。
「……どうしたの? 周平」
「外は……嫌だ」
「誰もいないよ」
「そういう、問題じゃない」
俺が明らかな拒絶の意思を伝えると、拓真は目を細めて俺を見た。少しの間そのまま無言だったが、拓真の方が溜息をついて、車のエンジンをつけた。
「時間勿体ない。スーツ見にいこ」
拓真は久し振りに反抗的な態度を示した俺に対して、決して怒った素振りは見せなかったが、美容院を出た時の上機嫌さは消えていた。
そのままの微妙な空気で淡々とスーツを選び、そこから寄り道することもなく真っすぐに部屋に帰ると、入口のドアを閉め施錠した瞬間に、拓真が激しいキスをしてきた。
「周平、周平……」
「っ、」
「今日は、周平のを入れたい、入れさせて」
糸引くキスを繰り返しながら、拓真が俺のズボンの中に手を差し入れた。
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