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「ぎゃははは、マジウケるんだけど!」
「こら、千夏! 言葉遣いが悪いっ」
「おい」
「拓真君悪いね、家の子は品が無くて」
「そんな事はないですよ。とても素敵なお姉さんがいて周平君が羨ましいです。俺は一人っ子なので」
「おいコラ」
「そうなの? じゃあ家の子になりなよ、拓真君なら大歓迎だよ」
「おい!!!」
「ああ周平、いたのー?」
リビングにいた周平君以外の家族と四人で談笑しながら遅めの朝食をとっていた。
お姉さんを始め、おばさんもおじさんも濃いキャラクターで実は結構人見知りする俺でも、すんなり輪の中に入れてもらえた。
家族って言うものがよく解らない俺でも、この家はとてもいい家族なんだなって感じられた。むず痒くて……温かかった。
そこに大分遅れて登場した周平君。当然だけど、かなり戸惑ってるみたい。
「ほら周平! 拓真君待たせて! ところで拓真君、今日はどこか周平と出掛けるの?」
「は?! つーか母さん拓真君って……」
「いーじゃない、まさかアンタの友達にこんなイケメンいるなんて思わなかったんだもの。ねー拓真君」
「そんな事ないですよ。周平君は凄く人気者みたいですし、周りの友達もかっこよかったですよ」
「し、周平く……っ」
俺が名前で呼んだことに動揺したのか、周平君は顔を赤くして口を手で覆っていた。
「何アンタ、顔真っ赤にして」
「う、うるせぇな馬鹿姉貴! 黙ってろよ!」
「にゃにおぉ? お姉様にそんな口きいて、……ねえ拓真くぅん。周平のはっずかしぃ過去、教えてあげよっか?」
「すみません申し訳ございません調子こきました失礼いたしました」
大学で感じとった雰囲気とは全く違った扱いを家族からは受けているみたいで、それが何だかおかしい。友達の間では、はたから見ても明らかに中心人物だったのに。
家族って普通、多分、きっと……特別に素を出せるもの、なんだろうな。
よく、わかんないけど。
「お食事、ご馳走様でした」
「あら、いいのよ拓真君! そのままにしておいて。たいしたもの出せなくてごめんなさいね」
「いいえ。こんなに賑やかで楽しい朝食の席にご一緒させて頂いて嬉しかったです。……そろそろ帰ります。本当にお世話になりました」
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