43人が本棚に入れています
本棚に追加
「れ、連絡先っ」
「……は? え?」
「……俺の連絡先、聞かれたの、アレ、まだ有効……?」
― 『っ、いや、ま、待った! 番号とアドレス、交換してよ!』 ―
……返事が無い。
恥ずかし過ぎて周平君の肩口に顔を埋める。
「無効」
「……」
「な、わけねぇだろ……っ!」
「わっ」
「ああ有り得ねぇ、拓真、可愛すぎる」
抱きしめる力が更にまた強くなって、苦しくて周平君の背中を叩いた。意味が通じたようで、拘束が緩くなる。俺は叩いた手を、そのまま周平君の背中に回した。
「拓真、まだ、まだ自分の気持ちに整理つかないから、言えねぇけど」
「――うん?」
「いつか、そんな遠くない内に、言うから」
こんな遠回しなことがあるのか。
もどかしくて、それなのにそのもどかしさすら心地好くて。
ノンケだろう彼は、俺のこともそう疑ってなさそうだし、そりゃあ躊躇うのが普通だよね。
「……うん」
だから、ただ俺はそう言えば良いんだ。
いつか来るかも知れない、来ないかもしれない日を待つよりも、ただ周平君と友達でいられる権利を守りたい。今は、とりあえず。
彼の身体より、彼との時間が欲しい。
大学四年、六月十五日。
俺と周平は友達になった。
最初のコメントを投稿しよう!