檻の中 (拓真視点)

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「れ、連絡先っ」 「……は? え?」 「……俺の連絡先、聞かれたの、アレ、まだ有効……?」 ― 『っ、いや、ま、待った! 番号とアドレス、交換してよ!』 ― ……返事が無い。  恥ずかし過ぎて周平君の肩口に顔を埋める。 「無効」 「……」 「な、わけねぇだろ……っ!」 「わっ」 「ああ有り得ねぇ、拓真、可愛すぎる」  抱きしめる力が更にまた強くなって、苦しくて周平君の背中を叩いた。意味が通じたようで、拘束が緩くなる。俺は叩いた手を、そのまま周平君の背中に回した。 「拓真、まだ、まだ自分の気持ちに整理つかないから、言えねぇけど」 「――うん?」 「いつか、そんな遠くない内に、言うから」  こんな遠回しなことがあるのか。  もどかしくて、それなのにそのもどかしさすら心地好くて。  ノンケだろう彼は、俺のこともそう疑ってなさそうだし、そりゃあ躊躇うのが普通だよね。 「……うん」  だから、ただ俺はそう言えば良いんだ。  いつか来るかも知れない、来ないかもしれない日を待つよりも、ただ周平君と友達でいられる権利を守りたい。今は、とりあえず。   彼の身体より、彼との時間が欲しい。  大学四年、六月十五日。  俺と周平は友達になった。
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