鳥籠から見た景色

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 こんな状況なのにも関わらず、二ヶ月もこの環境を拓真が維持できているのには理由がある。  俺が勤務しているのは拓真の父親が取締役を勤める会社で、拓真もその組織の一員だ。取締役の息子である拓真が根回しして、現在は俺を休職扱いにしている。それに俺の家族にも不審がられないよう、拓真が上手く立ち回っているようだった。  拓真のマンションと俺の実家はそれほど近くもないし、家族はこの場所を知らない。  何もやる事がなく、やれる事もほとんどない。 寝るか、食べるか、オナニーするか。  三大欲求を満たすしかない生活。  バスルームを解放されてからは、時間に関係なく湯船にお湯を満たして浸かっている。拓真の趣味なのか、入浴剤が何種類もあり、それらは自由に使うことを許されていた。  適当に一つ選び湯船に放り込むと、野球のボールくらいの大きさのバスボムがしゅわしゅわと勢いよく泡を吹き出し、色を放った。 「ただいまー」  玄関の方から、拓真の声がした。足音が聞こえ、少しするとバスルームのドアが開いた。 「またお風呂入ってる。外寒かったし、俺も入ろうかな」  拓真が着ていたスーツを脱ぎ、浴槽に入ってきた。 「いい匂いー……バラの匂いだね。周平にしては随分ロマンチックなの選んだねぇ」  バラのものを選んだという意識は無かったが、言われてみれば確かにそんな匂いだった。  香りに無頓着な俺が拓真の発言にいまいち反応しないでいると、拓真は笑いながら俺に向き直り、キスをしてきた。 「……ん、」  重ねるだけのキスから、徐々に互いの唇が開き、隙間から出した舌先でまたキスをする。 「ふふ、バラって、俺たちみたいなのも薔薇って言うんだって」 「?」  言われた意味がわからず顔をしかめると、拓真が愉快そうにくっくと笑って深く舌を絡ませてきた。 「愛してる……」  拓真が耳元で囁いた。  俺はその言葉にいつも返事をしない。ただ、求められたら求め返していた。
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