烙印

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「出来ちゃったの」  大学時代、サークルの後輩だった彼女とは、例に漏れず恋愛関係ではなく、あくまでセックスを楽しむ間柄だった。三回、セックスをしたが、彼女には長年付き合っている男がいるし、そういった意味では一番不安を感じず行為に及べる相手だった。 「……俺の子?」 「彼氏とは絶対ゴム着けてたし、そもそも三ヶ月近くセックスしてないもん。絶対先輩の子だよ。前、ゴム着けないでしたよね?」 「そうだっけ……?」 「――あのね、あたしね、先輩の子なら産みたいって、思ったんだ。先輩鈍いから、気付かなかったかもしれないけど、あたし、先輩のことずっと好きだったんだよ。だから、子供が出来て嬉しいの」  本当に嬉しそうな彼女に、俺は罪悪感と、芽生えた愛情のようなものを感じていた。  産みたいと強く訴えてくる彼女に、つい、分かった。と言ってしまった。結婚してくれるかと問われ、今いる恋人に話をつけてくると言うと、僅かに顔を顰められた。 「先輩、彼女いたんだね。全然言ってくれないから……」   彼女じゃないしな。などと、この場に不釣り合いな暢気な事を思いながら、とりあえずその場を後にした。 「俺ねぇ、知ってたんだよぉ。周平が色んな女と寝てること」  ギクッと心臓が震える。 動かせない身体に汗が伝い、ベッドに染みていくのを感じる。 「でも、今に解ると思って許してあげてたんだよ。どんな女を抱いたって、一番気持ち良くなれるのは俺の身体だってこと。それを知るための猶予期間だったんだから。 ――なのに、酷いなあ周平。子供作っちゃうなんて反則じゃん。許せないなあ、許せないよねぇ」  笑いながら俺の肌に触れる拓真。愉快げに俺の乳首を舐め回している。止めろ、と言いたくても言葉はくぐもって形にならなかった。
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