檻の中 (拓真視点)

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 元々男にしか興味が無かったんだけど。  だからってゲイにモテそうな、見た目いかつくて、浅黒い肌して女好きそうでセックス好きそうでいかにも軽薄そうな……そんな男がタイプってわけじゃない。  ってゆうか、つまんないんだよね。だってあいつら簡単に俺に堕ちるからさ。  ノンケの所帯持ちなんか最高。  寂れた雰囲気の、性欲なんかもう枯れ果てたんじゃないの? って男がいい。 奥さんと自分の遺伝子を持った子供の存在に葛藤して脆い正義感や常識や父性に翻弄されながらも――  タダで与えられる今まで味わえなかった快楽に飲み込まれるの。  それはまるで、札束いくら叩いても良いと思わせるほどの、極上のドラッグのよう。  その後どうなろうと俺の知ったところじゃないよ。 俺しか要らないなんて寒いこと言う男にはもう興味湧かないし。 「隣、良いか?」  大学の講義で、知らない男に声を掛けられた。  顔以外は愛想の良さだけが売りみたいな俺は、嫌な顔なんて一つも浮かべずニッコリ笑って隣の席に男を促した。 「サンキュ」  男は、何と言うかいかにも女にモテそうな感じだった。顔もかなり良いんじゃないの、これ。背も高そうだし。ガタイも良いし肉食系とかお寒いマスコミワードが浮かんで来る感じ。って言うかこれは確実に女喰っちゃ捨ててるね。本当、そんな感じ。 ……興味は湧かないな。  男を横目で観察して、すぐに飽きた俺は再び視線を真っすぐ前に向けた。
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