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プロローグ
かわいいものが好きだった。
だからぼくもかわいいものになりたかった。
母親がぼくに着せているような、怪獣や正義のヒーローがプリントされていたり、青やグレーや黒の味気ない服は、かわいさのかけらもなくて。
ぼくが着たいのは、たとえば薄いパステルカラーで袖がチューリップみたいにぷっくりしたブラウスや、ひらひらフリルがふんだんにあしらわれたスカートで。
そんな服を着てテレビの向こうで歌ったり踊ったりしてるアイドルたちは、まさしくかわいいの塊で。ぼくのあこがれの的だった。
そして彼女たちに送られるファンの熱い眼差しがうらやましかった。
ああ、彼女達はかわいいって認められているんだ。存在を肯定されてるんだ、
そう思って。
こういう話をすると、ジェンダーがどうとかって言われそうだけどそういうのじゃない。ぼくは男だけど、かわいいものが好き。それだけだ。
男だから可愛くなっちゃいけないなんて、おかしいと思う。かわいいに性別なんて関係ない。
おとぎ話の王子様だってもしかしたら、ひらひらのお姫様みたいな服が着たかったかもしれないじゃないか。
あんな風にぼくもかわいくなりたい。
ぼくもかわいいって言われたい。
特別な存在になりたい。
それが叶うなら、ほかに何もいらない。
何でもする。流れ星を見つける度、七夕で短冊に願いを書く度、お正月に初詣をする度に。
そう神様に願っていた。
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