第1章 旅の始まり、問いの始まり。

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問4「全財産失ったらどうしたらいいの?」 「えっここにあった鞄、知りませんか?」 黙って首を振る、駅員。 ・・・ポカーン。 一瞬の出来事だった。 旅して5日目。 僕は、全財産を失った。 ー バルセロナでの4日間は最高だった。 なんせ、無謀な旅に憧れていたので、宿も決めずにバルセロナに到着。 道中、キモチワルイおじさんに絡まれながら「地球の歩き方」に載っているゲストハウスに到着した。 夜22時過ぎていたが、幸い、空きがあり、4泊同じ宿に泊まることができた。 宿ではインターネットも使えたし、簡素だけど朝食もあった。 今でも、硬くて小さい青リンゴを朝食のバイキングからいくつか拝借して、サクラダファミリアやグエル公園を回ったことを覚えている。 とにかく、これから世界一周するまで日本に帰らないと思っていたから、いざとなったらゴミ箱を漁って食料をゲットするくらいの気合が入っていた。(結局、一度もすることはなかったけど) 当時はスマホなんてない。wifiもないから、調べ物は容易にできない。 僕は『してみたい!世界一周』という本を持って、旅に出た。 僕にとって、この本が、世界一周のバイブルだった。 4泊した宿を、朝にチェックアウトして、途中で乗り換えで降りた駅のベンチで、荷物を置いて駅のトイレに行った。 そしたら、その荷物が、丸ごとなくなっていたってわけさ。 40Lのバッグに、あのバイブルの本、地球の歩き方スペイン、画材、寝袋、着替え、メガネ、ライトなどいろいろ入れていたんだけど、全てなくなって、小さなリュックとパソコンだけが手元に残った。 「坊やだからさ」 ガンダムの名台詞が脳内にこだまする。 どうしようもない。 泥棒は、きっと僕のことを見ていたんだろう。 駅に着いた瞬間から。 僕がバックパックを下ろしてトイレに行ったのを見て、さぞ可笑しかったたことだろう。 『ヒャッホー!いいカモだ!』ってね。 僕には悩んでいる暇はなかった。 明らかに、人が持ち去ったものだ。容易には出てこないだろう。 パスポート、財布、携帯電話は残った。ドリスと落ち合うことはできる。旅を続けよう。 冷水をぶっかけられてなお、武者震いするような興奮があった。 自分が、世界にいるのを感じた。 かかってこいやー! 問4の回答「全財産失ったことをネタにして強く生きろ。」2009.6月。
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