第1章 旅の始まり、問いの始まり。

1/7
前へ
/7ページ
次へ

第1章 旅の始まり、問いの始まり。

問1「朝が来たら、私は生きているのかしら?」 ブゥゥン…カッカッカッ…ガヤガヤ… ぅん…. 世の中がぼんやりと明るい。きっともう昼だ。 ラジオをつける。NHKのラジオ英会話が流れる。 やっぱり昼すぎだった。 「ベル、おはよう」 「おはよう、アオ。昨日も遅かったね」 ファァァァとあくびしながらうなづく。 自分でもわかってる。 生活のリズムが乱れてる。 朝起きられない。 お昼の時間に働いてた食堂もクビになった。 何してんだろうなぁ。 ガスをひねってお湯を沸かす。 部屋がもわっと暖かくなる。 京都寺町二条の雑居ビルの二階。 四畳半の部屋には大量の本と鍼灸の道具と画材。 京都で暮らし、鍼灸師を目指す貧乏学生のリアルな生活だ。 鍼灸学校は3年目から国家試験の勉強が中心となる。 現在は2年目の1月。 そろそろ決めなければいけない。 鍼灸師を取るか、やめるか。 「ベル、僕は鍼灸師になるのかなぁ」 「アオはどうしたいの?」 「「お前、鍼灸師になって人殺すんか!」」 「「殺しません!」」 「まだ、どんな人も救える自身がないんだ」 「そうね?」 ベルはくるっと宙を舞う。 「まぁ、今やりたいことやったらいいよ。アオは健康で何でもできる」 「そうだね」 僕は18歳で左の外くるぶしを骨折した。 足首の下にある出っ張った骨だ。 3ヶ月くらい入院して、医療の現場って面白いと思った。 理学療法士のお兄さんや看護婦さん。入院している患者さん。 外科の人たちはいつも元気だった。 ?? 「朝が来たら、私は生きているのかしら?」 「Yes! Why not?」 「どうしてそう言えるの?」 「君は若い、18歳」 「何の病気も持ってないし、臓器の異常も見受けられません」 「18歳の突然死の確率はとても低い」 「明日死ぬ可能性より生きる可能性の方が高いと思います」 ?? ?「ベル、 人は、寝たきりになった時に、楽しいことを思い出すと思うんだ」 「うん」 「だから、僕は、楽しい思い出を作りにいこうと思う」 自律神経失調症、だから、朝が来ない日々だった。 この生活を脱出して、朝日とともに生きる旅に出るんだ。 問1の回答「朝が来るように、生きるのだ」2009.1月。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加