その後の二人

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「隆太、好きって、言って」 「……好きだ」 「っ、」 「好きだ。太一」 ゆっくりと耳元に唇を寄せられて、低く、腰をわざと刺激にするように甘く蕩ける声で脳内に直接囁かれる。 腰にくる声って、きっと、こういう声の事を言うんだろう。 「……攻撃力、高過ぎ」 勘弁して欲しい。もう、これ以上心臓の鼓動が速くなったら、どうしてくれるんだ。止まりでもしたら、どうしてくれるんだよ。 「俺も、好き……」 「ん?聞こえない」 「……っ……聞こえてるくせに」 「まあな。でも、もっと聞きたい」 ほんと、いい性格してるのは、どっちだよ。 「隆太が、す……、んっ……!ん……っ……」 俺が再び口を開こうとした時、不意に目の前が影に覆われた。 途端に、欲望を駆り立てる危険な香りが、増した。 好きだと紡ぐ前に塞がれた唇。 待っていたと言わんばかりに、押し当てられた柔らかい感触に全神経が酔い痴れる。 隆太が聞きたいって言ったくせに、こうやって唇塞がれたら、好きだって言えないんじゃないの。 「ぁ、ふっ……ぅ……」 お互いの身体を引き寄せてピッタリと密着させて。 どちらからかもわからないまま舌を絡めて、息継ぎの合間に濡れた吐息を漏らす。 「はっ……、悪い。待ち切れなかった。それと、もう一回」 「ん……、んんっ……」 一度隆太の唇が離されるものの、直ぐにまた俺の唇を塞いで、呼吸すらも奪って。 隆太が満足するまで、何度も貪られた。 薄っすらと目を開ければ、隆太の瞳に映る自分のが、とろっとろに蕩けてだらしない顔をしてるのがわかった。 羞恥にも似た気持ちにさせられるのに、どうしても開いた口が塞がらない。 むしろもっと、なんて、どうかしてる。 「好きだ」 「ぁ、ぁっ……耳元で、言うのはっ」 「太一、好きだ。すっげえ、好き」 「……っ……言い過ぎ、って。こっちの身にもなってよ」 「太一が言えって言った。俺、太一にねだられんの好き。それに、煽られんのも」 「確かにねだったけど、煽っては……んぅっ……」 「充分、煽ってんだよ」 的を定めて獲物を狙うような、野獣の如く鋭い眼光。 その瞳に捉えられた瞬間、俺は自分の理性が切れる音を、初めて聞いた。
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