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「美空ちゃん、今日は友美さんと友美さんの旦那さんが来てくれるわ」
スタッフの人があたしに伝えてきた。今日は親となる二人がやってくるらしい。今まで友美さんだけだったからよかったけど、ついに友美さんの夫もくるのか。
たった一人増えるだけで、こんなにも緊張するのか。手が汗ばむ。
「雄太さんっていうのよ」
スタッフの人から写真を見せてもらった。そこには、友美さんの横で優しそうに笑う男性がうつっていた。
「優しそう」
それ以外の言葉が見当たらないほど、その人には「優しそう」という言葉が似あうような気がした。短髪の髪は無造作にはねていて、だらしなさそうに見えるのに服はオシャレなように気遣って見えた。
なにより笑ってクシャっとなる目じりあたりが、幸せそうだなぁという感覚をあたしに伝えてくるのだ。
「えぇ、きっと優しいわ」
スタッフの人があたしの頭をなぜる。
「緊張はすると思うけど、いつもどおりでいいのよ。美空ちゃんは最近笑顔が増えたから、大丈夫」
その言葉があたしの背中を押してくれるような気がした。
ちょうどこの扉が開いたら、別世界なんだ。あたしは、少し気持ちがワクワクしていた。
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