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「今度、お兄ちゃんにそんな態度とってみな。その時は、あたしがアンタの大切なところ蹴り飛ばしてあげるから」
にっこり笑って、男の子の服から手を離すと、男の子は尻もちをついて数秒間動かずにあたしのことをキョトンと見上げていた。そのあとはハッとして、逃げるようにお店から出て行った。
「み、美空ちゃん。結構、すごいんだね」
スタッフのお兄ちゃんは、少しあたしのことを怖がっている。目がまだおびえている。
「だって、アイツがお兄ちゃんに態度悪いから、腹が立って。
いつも優しいお兄ちゃんに、おっちゃんとかいうアイツが悪い」
「あの子は、昔あんな子じゃなかったんだけどね」
スタッフのお兄ちゃんは、男の子がすでに出て行ったドアをじーっと見つめていた。まるで、遠くを見つめるように。
「知ってるの?」
「知ってるも何も、友美さんところの一人息子だよ」
「・・・・、え?」
まさか、あんな優しい友美さんの息子があんなガキだとは驚いた。でもどうして、あんなふうになってしまったんだろう?あたしは不思議で仕方がなかった。
「友美さんの家には昔、女の子がいたんだ。あの子の妹にあたる子でね。
それはもう、かわいらしい女の子だったよ。
でもある時、女の子は死んでしまったんだ。小さいのに、病気にかかってしまってね。
それ以来、ひかる君はあんなふうにワガママな男の子になってしまったんだ」
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