1、ヤングギャングスタ

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 そうだな、最初の記憶は、寒さだ。雨がふっていて、何もかも湿っていて、なのに喉がとてもかわいている。腹の中は随分前から空っぽで、身体の内側がきりきり痛む。  聞こえてきたのは赤ん坊の泣き声だ。  哀れな泣き声だ。  赤ん坊の泣き声にも種類があって、断末魔のような、断罪するような、サイレンのような、耳障りな泣き声があるが、それは小さな小さな今にも消え入りそうな弱い泣き声だった。  その弱々しさに、俺はこれを所有すれば、ずっと俺のことを裏切らないんじゃないかなって思った。直感さ。だから拾った。  それは小さくて、やわらかくて、昨日ふった雨でできた水たまりに半分つかっていて、半分は乾いていて、ちゃんと温かかった。サンディと二人で、家に持って帰った。  それが一番下の弟、レイン。今はすっかり成長して、あのとおり立派な淫売だ。
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