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「…っは、あ…」
離れたくないという意思を表すかのように互いの舌先が透明な糸で繋がれる。
息を乱す私を焦点の合わない位置でジっと見つめた心さんは、やがて綺麗な顔をくしゃりと歪め、
「ふざけんなよ」
一言そう呟いたかと思えば、私の身体を掻き抱くようにその腕の中に収めた。
「俺をお前無しじゃ生きていけないようにしたのは、誰だよ」
「…っ」
「お前だろ」
振り絞るような声と痛みすら感じる腕の強さに、涙がぶわりと込み上げてくる。胸が、苦しい。
「…っう、…う」
ボロボロと涙を流し情けない嗚咽を繰り返す私をギュっと抱き締めながら、心さんは静かに言葉を切り出した。
「包帯をぐるぐるに巻かれて、幾つも管を通されてるお前を見つめながら“頼むから目を覚ましてくれ”って…何度願ったか分かんねえよ」
微かに震える心さんの声と腕が、“当たり前”の事などこの世には存在しないという事を教えてくれる。
それが余計に私の涙を呼び、止め処なく頬を濡らす。
「もし目を覚ましてくれたらお前が鬱陶しがるくらい傍に居るって、誓ったんだ」
「…心さんっ…」
「お前の意識がなかった日々に比べたら、お前が俺を覚えてない事なんて痛くも痒くもねえよ」
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